式典に沸くベルンは、復興の色合いに染まっていた
裏切りの女王 美しき処女王
押し抱く女王への賛否は激しく、それ故に活気に溢れる
ゼフィールは、新世界をもたらすのだと言った
だが竜に頼らずとも、世界は容易く塗り変わるじゃないか
不老のシステム 10:彼と彼女の恋のシステム
「城下の方は、式典というより祭りだな」 レイとソフィーヤはベルンの城下を歩いていた。武人気質なベルンはエトルリアの祭りのように気取ったところはないが、人々の日頃の労を労うように、多くの催しが開かれているようだ。 一つななめ前を歩くレイを、ソフィーヤは追う。見え隠れする真っ直ぐな、みどり色の瞳が好きだ。
(レイの中の何かが、変わってしまっているのだろうか?)
魔力が変質したのはわかっている。レイの中に、真理の種が蒔かれたことも。膨大な知識は理解することに時間をかけるけれども、レイはいつか全てを操るだろう。 ベルンで別れる時、ウィンドは――本当はラガルトという男はレイを見て言った。 (お前が狂わないことを心から願っている) 例えば。そう例えばソフィーヤの瞳に映る、あのみどり色は何か変わったのだろうか――。
足を止めたソフィーヤに気がついて、レイが振り向いた。真っ直ぐで強い瞳。 「どうしたんだ」 「……レイは、どんどん変わるのだな、と……」 呟くソフィーヤに、呆れた目線をレイは送る。おまえは馬鹿だな、と口にまで出した。 「よし、じゃあお前も変えてやる」 「え」
レイはソフィーヤの手首を掴んで勢いよく引いた。勢いに任せてソフィーヤとレイの位置が途端に近づく。
レイの目の縁が赤くなり、視線を逸らされるのをソフィーヤは間近で見ていた。ぱちり、と菫の瞳がまたたく。途端、体温が急上昇する。 賑やかな祭りの喧騒が遠のき、鮮やかな世界がモノクロに変わる。眼前のレイばかりが華やかに色めき、ソフィーヤの中から楽隊が激しく金楽器を鳴らし始めた。 口元に指先を伸ばしたソフィーヤは、はっとしたように指を離し、常のゆるりとした動作とはまるで違うあたふたとした動作で頬に手のひらを置いた。
こんなに容易く、世界は変わる。
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