彼女はずっと、何も言わなかった



巫女たる所以がそうさせたのか言葉は少なく
形にしないと見えなくて、随分苛ただしく思った


どうして共にこないのか
どうしてついてくるのか
どうして、傍にいるのか


言葉にして聞けば、何かが返ってきただろうに
彼女自身、何かが変わるだろうとわかっていただろうに
二人、何も言わず
旅した時間がいつか、物言わぬ空間を氷解させてくれるものかと――






そんなこと、あるわけないに決まってる










「ねえレイ?」
「なんだ」
「不老のシステムを解明したら、私たちは……どうしましょうか」


編みこまれた長い髪がぽんと跳ねる
くるりとレイを振り返って少女は微笑んでいた
「私と一緒に……千年を、生きてくれますか?」
「……お前が、俺と一緒に時を流れればいいだろう?」
平行線を告げながら、それは相分かつものではない


「それでは……負けた方が、言うことを聞く……というのはどうでしょうか……」
「何で勝ち負けを決めるつもりだ」
「より強く……好きな方が、負けです……」




レイは話にならない、と言いたげに足を動かした
「そんな、最初から負けるのが解っている勝負は嫌だ」


「ええ……嘘です。私が、負けます……ねえ、レイ!」





そうしてまた始まる、旅の物語



END