(ネルガルが、狂った) だから、止めておけと言ったのに。 (わしも少しずつ、狂っているのかもしれない) そんな風に、笑うのに? (お前は変わらないな) 本当に? (おいて逝くことを、許してくれるか――)
この、誰一人いない闇に
誰も?
(私も?)
俺は、昔を夢見ている
不老のシステム 8:千年夢
親友達が頭を並べ、沈痛に黙っていた。 目の前には天より降りた神宝。 これを手にすれば、勝機はあるだろう。 これを手にすれば、人は勝つだろう。 だがその後に残る我々に、幸せはありえないかもしれない。 人々のためだ、などと嘯くつもりはないが。 神の力に通ずる竜たちと戦いの道を選び、大地はもはや死の国のようであった。 始めは一人であったはずなのに、その行為だけが俺たちを奉りあげ、揃った八人である。
(未来を担う人々のために、何故力を惜しもうか) 白き心でデュランダルを手にした勇者ローラン。 (我が祖国のために) 強き意志でマルテを捧げる騎士の騎士バリガン。 (戦に泣く全ての民のために) 慈悲深き英雄ハルトムートが手にするはエッケザックス。 (己を失おうと、志を失わぬために) 心を喰らうアルマーズを躊躇なく掴む強き狂戦士テュルバン。 (父なる空と、母なる大地に誓って) 風のような涼やかさで、ミュルグレを手にする神騎兵ハノン。 (神の大いなる慈悲の現われを……) 気高き眼差しでアーリアルを抱く聖女エリミーヌ。 (今、未来の子等が笑って歩き出すために) 全てを見るもの、大賢者アトスがフォルブレイズを手にした。
俺は目の前の書物に手を伸ばした。 神将器最高の魔力を秘める黙示録を、操ることができるのはこの大陸に俺だけであろう。 (だがブラミモンド。黙示録を手にすれば、君は) 親友達は憂いを込めて俺を見た。 (黙示録は我々の神将器とはまた異なる。それを手にするために、君は何もかも失くしてしまう) 心だけではなく、志も。 己だけでなく、歴史も。 誰もが残すものを、失くしてしまうのだと。
俺は親友達に向かって笑ってみせた。 確かになにもかも闇に溶かしてしまうことは恐ろしい。 だから、これを手にする前に告げたい。
(我が友たちよ、私はお前達と出会い、共に戦ったことを心から喜びと感じている)
俺は黙示録アポカリプスを掴んだ
ローランが制そうと手を伸ばした。 バリガンが耐えるように唇を噛んだ。 ハルトムートが神を呪う一節を口走り。 テュルバンの瞳が哀しみを宿す。 ハノンは美しい瞳から涙を零し。 エリミーヌは片時も見逃すまいと見つめ続けている。 そしてアトスが、共にだ、と告げて――
お前は、俺じゃない!
――そして、謎多き者ブラミモンドは生まれたらしい
ただの、知識だ。 魂の戦いを制したレイは瞳を開いた。 お前は俺じゃないし。
俺は、俺にしかならない。
|